モノタロウ。法人税、あるとき、ないとき、で比べてみた。

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兵庫県尼崎市に本社がある事業者向け工業用資材の通信販売会社「モノタロウ」。

もし、法人税が増税されたとき、減税されたとき、どうなるだろう?と思い立ってシュミレーションしてみました。

モノタロウの決算数字(直近)

キャラクターは著作権があるかなと思い、代役を務めました。

  • 売上高 157,337百万円
  • 経常利益 19,671百万円
  • 純資産額 47,658百万円
  • 総資産額 81,263百万円
  • 自己資本比率 57.5%
  • 従業員数 2,170人(年間平均数の派遣職員やアルバイト含む)
  • 従業員平均年齢 37.0歳
  • 平均勤続年数 5.0年
  • 平均給与 5,590,708円
  • 販売管理費中の人件費 6,765百万円
10年間で正規従業員は、103人から765人に増えていますが、離職率は年に1〜2%程度と低いです。当期は、採用未達だったとのこと。
データで見るモノタロウ
  • 売上高経常利益率=19,671百万円 / 157,337百万円=12.5%(12.5%)
  • 総資産回転率=157,337百万円 / 81,263百万円=1.9回/年(2.2回)
  • 自己資本比率=47,658百万円 / 81,263百万円=58.6%(57.5%)

 括弧の中は会社発表で、微妙に違うのは、細かい部分の調整を手抜きしたからです(ごめん)。この3つ(自己資本比率は逆数)を乗ずると、純資産利益率(ROE)になります(下の表を参照)。これは、株数に変化がなかった場合の理論的株価上昇率です。

モノタロウの収益サイクル

シュミレーション

シュミレーションの条件

モノタロウを選んだ理由は次のとおり。

  • 業務が単純で、人件費含む一般管理費の伸びが、業績とほぼ比例であるなど、シュミレーションむき。
  • 12月末決算なので、最新の数字が出ている。
  • 過去からの決算の数字がエクセルで提供されて分析しやすい。

さて、ここでは、過去6年の決算数字をもとに、

  • この6年間、内部留保ゼロ(法人税及び配当に全て消える)だった場合
  • この6年間、法人税がゼロ(株主配当30%)だった場合

のシュミレーションをしてみました。

主観が入る操作は、できるだけ排除したいので、ほとんどの数値は、実際の各年度の実績数値をそのまま使い、法人税率等だけを変えました。

それと、株主配当については、ここ数年30〜35%となっています。法人税がなくなり再投資冥利が増えたので、下限の30%としました。

実際には企業が大きくなるに連れ、業界内でのポジションが変わり、効率が悪くなったり、逆に信用がついて借入金利で有利になったり、いろんな変化があるはずなのですが、意見により、甘くなったり辛くなったり、見方が分かれるので省略。

この6年間の、法人税あるなしの結果

主観的な要素は排除しているので、この結果に異論がある人はいないでしょう。「いや、こう言う変化も入れるべきだ」みたいな主観に基づく考えは、その上で、加味すればいいです。

モノタロウの成長を法人税あるなし

2015年度から始めて、6年後の姿です。経常利益率は同じと推定しています。

内部留保がゼロのとき法人税ゼロのとき比較
純資産額12,632百万円79,845百万円6.3倍
経常利益5,214百万円32,956百万円6.3倍

法人税増減が、企業成長に反映されて、事業規模で、6.3倍の差がつきました。

6.3倍の違いですよ!こう言う変化が、全国規模で起ったら、どうなりますか?

全国的に法人税増税になれば景気が悪化するし、実際には、6.3倍より、もっと大きな差がつくような気がする。

ちなみに、株主配当がゼロだったら、軽く10倍を超えていました。

「配当ゼロなんて」というかもしれませんが、株主は配当をもらっても再投資することが多いので、配当のたびに所得税を払うのがムダで、「内部留保に残しておいてください」と願う株主が多いのです。

また、投資家は金の亡者みたいな印象があるかもしれませんが、「社会に役立つ企業を応援するために株を持つ」投資家も、結構多いのです。

従業員数のシュミレーション

内部留保がゼロのとき法人税ゼロのとき
従業員(臨時含む)1,237人7,793人
雇用1,337人の
雇用の止が必要
5,219人の
雇用拡大

6年前の従業員数が、1,237人であり、内部留保を溜め込むことなく、規模の拡大がなかったとすると、今も従業員数は変わらず。とすると、実際の現員は2,574人なので、1,337人の雇用の止めが必要となります。

一方、法人税ゼロで内部留保を使って規模拡大をおこなった場合、ここ数年、従業員一人当たりの売上高は、ほぼ一定なので、単純に乗じます。5,219人増えて、7,793人の従業員となります。

法人税のあるなしで、雇用者が、1,237人なのか、7,793人なのか、変わってくるのです。(あくまで、法人税率等を変化させただけのシュミレーションです)

「法人税増税で給料アップ」論が、【誤差の範囲】すぎて、検討余地なしとわかります。

さまざまな影響

これは、外部環境が変わらずという前提ですが、法人税増税の日本と、減税の日本で、景気が同じということはあり得ないので、もっと大きな差がついているはずです。

もし、6年前に法人税を廃止した日本で、全ての企業がモノタロウのように純資産利益率(ROE)が高く推移すれば、今頃、日本のGDPは30兆ドルを超えて、世界一(アメリカの約1.5倍)になっているね。

ありえん、モノタロウのROEは40%を超えているが、日本の中小企業を含めた平均ROEは2、3%と言われている。

日本のほとんどの企業は成長が低いので、利益の内部留保による再投資も、あまりなく、赤字が慢性化していたり、法人税増税の影響も、成長企業に比べればほとんどなかったりします。正直なところ、真面目に法人税を払っているのは、(黒字が明らかな)成長企業のほか、正直企業です。

66%ぐらいの法人は、赤字と称して法人税を払っていません。

法人税増税は、成長率が高い有望企業ほど狙い撃ちにしてダメージを与えるのね。

そう言う企業は、成長とともに雇用を増やす企業なんです。法人税がなければ、もっと雇用が増やせるはずだったんです。

「法人税下がったのに、従業員にはメリットなかった」と指摘する人もいるわね。

それについては、別に書きます。

まとめ

モノタロウの話から外れて一般論になってきたので、いったん、まとめ。

  • 日本のほとんどを占める停滞企業にとっては、法人税増税の影響もさほどではない。
  • 日本の数少ない優良成長企業にとっては、法人税増税は、企業規模が数倍変わってくるほどの大きすぎる影響を受ける。
  • 日本の雇用の拡大は、そういった優良成長企業が担っている部分が大きいので、法人税増税は、雇用環境を極端に悪化させる。ダメージは、はかりしれない。(法人税の増減次第で、雇用者数が6分の1になっていた。)
  • 今世紀に入ってからの法人税減税は、従業員を守るためという側面も強い(給料アップどころではなかった)。
  • 最優先で減税すべきなのは、法人税。おまけで消費税かな。

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