多くを稼ぐ貧乏人
ある男の話から始めます。
親が事業に失敗し、50億円の借金を相続してしまった男がいました。相続放棄という選択肢もあったのですが、関係者に迷惑をかけたくない、と借金を返していくことに決めました。
男には、商才がありました。死に物狂いで働き、年に10億円を稼ぎました。来年以降も、このぐらいは稼げそうです。
「これなら、利息(年4%)を入れても、6年ぐらいで返済できそうだ」
ところが、この国には、所得税の累進課税があったのです。男は、最高税率80%を税として取られます。手元に残るのは2億円。つまり、利息を払うだけで手一杯。借金の元本は永遠に減らないのでした。
この男のひと、可哀想すぎませんか?
金持ちとは「多くの資産を持つ人」のこと
金持ちとは「多くを稼ぐ人」ではなく「多くの資産を持つ人」のことです。ですから、格差是正のために税をかけるなら、「資産課税」するべきです。この男のように、多くを稼ぐ大貧乏人もいるのです。そのような男が、格差の底辺から抜け出す手段、それが「多くを稼ぐこと」なのです。所得税の累進課税は、いくら稼ぐ能力があっても、貧乏人を永遠に底辺に閉じ込めるのです。
資産課税の意味(MMT的に)
有り余る資産を、眠らせておいたり、遊ばせておくことは、社会にとって損失です。ですから、資産を持つ人は、資産が多くの富を産むように努力しなければなりません。「資産を持ち続けることで損をする」のなら、資産を手放したほうがいい、と促すべきです。もちろん、資産が富を産んでいる人は、その富の一部を社会に還元してもらわなければなりません。ですから、資産課税は、とても意味のある税金です。
所得課税の意味(MMT的に)
一方、所得課税はどうでしょうか?
お金の儲け方が上手な人には、むしろお金を集めることで、社会全体の富を増やしてくれることが期待できます。普通の人より、ずっと、社会全体の富を増やすことが得意なのです。そのような人が、一生懸命に(社会全体のために)富を増やしている最中に、税金としてお金を取り上げることは社会にとって得策ではありません。もし、多くを儲けた人が自分の資産を蓄積し続けるのなら、そのときは、資産課税で徴収すればいいのです。
良く稼ぐ人って、普通の人よりずっとずっと働くエネルギーもあって、一般の人よりアイデアがいっぱいで、それを実現するために、お金が必要なことが多いんだ。
不労所得の人もいるよ。
そういう人にこそ、資産課税すればいいんだ。働かないで楽をしている人から、税金を取ればいいのであって、誰よりも多く働いている人から税金を取るなんて、働くことを罰しているみたいだ。
MMTでの、所得税の景気調整機能
もっとも、所得税の累進課税には強力な景気調整機能があります。インフレに迅速に対応するのです。
ですから、所得税の累進課税自体は、有益です。ただし、景気加熱時に景気調整機能が働くためには、平時には、所得税が十分に低いことが大切です。
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