イスラエルとパレスチナのWIN-WIN【前編〜解決を拒む既得権益】

この記事は約18分で読めます。
【前編・中編・後編】まとめ

  1. 現代の中東の対立軸は、「イスラム革命派vsアラブ世俗派」である。イスラエルが執拗に攻撃されているのは、中東に、欧米的な自由と民主主義の価値観を持ち込んだ国をつくったからである。
  2. イスラエルの最優先ニーズは安全保障であり、パレスチナ側の最優先ニーズは経済である。それらは、妨害さえなければ容易に相手に提供できる。妨害しているのは、既得権益である。
  3. 100年前にアラブ人とユダヤ人が協力してマラリアを殲滅して、この地に多くの住民が住むことができるようになったように、21世紀の新技術で水資源を創出することで協力すれば、この地を、さらに多くの人達が共生する豊かな地にすることができる。        
前編は4ページに分かれています

筆者はズブの素人であり、この投稿は素人目線です。

10.7のテロの後、パレスチナ人ミュージシャン(イギリス在住)のジョン・アジズ氏は、次のように書きました。

襲撃後の数日間、私は絶望的に感じました。

ハマスの残虐行為はイスラエルに対する単なる攻撃ではありませんでした。それはイスラエル人とパレスチナ人の平和共存という概念そのものに対する攻撃でした。しかし、私が孤立感と平和への願いをSNSに投稿したところ、パレスチナ人とユダヤ人の両方から多くの応援がありました。友人や家族がハマスに誘拐され、殺害されたイスラエル人からメッセージを受け取りました。彼らは、私の言葉がまだ融和は可能であるという希望を与えてくれたと言いました。

ここ数週間の恐怖にもかかわらず、あるいはおそらくそのせいで、多くのユダヤ人やパレスチナ人がこれまで以上に平和を望んでいることを知りました。

しかし、パレスチナ人が必要としているのは平和以上のものだ。(略)

彼らが必要としているのは雇用と経済投資であり、要塞化されたトンネルや勝ち目のない戦争ではない。

(2023.11.8)

私はこれまでずっと、暴力がパレスチナの大義を打ち破るのを見てきた

「彼らが必要としているのは雇用と経済投資であり」全く、そのとおりだと思います。

筆者は、中東問題にはズブの素人ですけど、テレビとかの解説には、違和感があります。それは何だろうと考えたら、それらの解説には(一般社会人なら誰もが持っているような)経済的な視点がないんです。そして、専門家の話には、解説はあっても解決策がないんです(すみません)。

でも、パレスチナの人たちが幸せになる解決策って、「豊かになる」「社会に役に立っている」という視点が、一番、大切ですよね。そして、豊かさが実現すれば、そのほかの問題の解決もずっと容易になります。

「できない理由」を解説して終わり、なんて、一般社会ではあり得ません。

テレビで主張されている解説の多くが「土地を取った取られた」の既得権益の主張、19世紀、よくて20世紀的世界観なのですね。「土地を奪ったイスラエルのせい」というゼロサムの世界です。

筆者は「どっちが悪い」論議には興味ありません。

でも、(ハマス共同創設者の息子である)モサブ・ハッサン・ユーセフ氏の著書「ハマスの息子」によると、ハマスは国土領域にそれほど関心があるわけではないようです。パレスチナ住民の関心ごとも、仕事(雇用)や生活向上や人権や安全であって、国土や国境線に強い関心がある人がどれほどいるのでしょうか

素人の筆者が感じる違和感は、そういうところなんです。

ユーセフ氏は、イスラエルに抑圧されていたヨルダン川西岸で成長し、ハマスの活動に身を投じますが、やがて、ハマスの非人道的で残虐な行為に失望し、テロ殲滅に力を尽くすようになります(現在はアメリカ亡命)。

ユーセフ氏は、「パレスチナ人の失敗は、国を建設することよりイスラエルを倒すことに何十年も注力してきたことだ」と述べ、イスラエルのせいにするのではなく、同じ過ちを繰り返さないように、と述べています。

私たちの社会生活や経済生活を振り返っても、「誰かのせい」と犯人探しを始めたら、決して、良いことにはなりません。

日本をはじめ先進国の歴史を振り返ると、経済的に豊かになれば、そのほかの問題の解決は、後からついてきます。ですから、順番が大切で、まず、「パレスチナ人が豊かになる方法」から考え始めたほうがいいと思います。

そうすれば、自然と、イスラエルとのWin-Win以外の方法はないと気が付きます。

今回(前・中・後)の投稿は、そういった素人ならではの視点で、パレスチナ問題を取り上げます。

本来は、WIN-WINであるイスラエルとパレスチナ

人手不足のイスラエルと、雇用を必要とするパレスチナ

イスラエル経済は慢性的な人手不足で、世界から働き手を集めています。

パレスチナの失業率は2022年には24%(ヨルダン川西岸地区では13%、ガザ地区では45%)に達しています。

特に、次の図のとおり、若い世代になるほど失業率が高いです。

なかでも、ガザは産業に乏しく、人口の8割が生計を国際援助に依存しており、雇用が圧倒的に不足しています。ヨルダン川西岸地区についても、全収入の4分の1がイスラエル企業やイスラエルの事業者による雇用から得ています。

イスラエル企業がパレスチナ人を搾取しているとか解釈する人もいますが、そういうことはルール整備されれば市場経済が解決することです。そのルール整備は、(悪いけど)本質的な問題ではありません。実際には次の図のとおり、イスラエル企業がヨルダン川西岸やガザの賃金水準を引き上げていますけど。

上図は、パレスチナ自治区に住むパレスチナ人の賃金や雇用の状況です。

パレスチナは、雇用者を産業別に見ると、第一次産業(農林水産業など)が6.8%、第二次産業(製造業など)が12.9%で、これらの割合が相当に低いです(特にガザ)。第一次、第二次産業の生産性が高いから割合が減少したのではなく、これらが未熟なまま、外国から援助資金が入ってきているので第三次産業(特に公共部門)だけが高くなっています。

ガザの大学就学率は中東で最も高く、ほぼすべての子どもが学校に通っています。一方で、卒業後の進路が不安定で将来に希望が持てず、これから先の将来を考える機会が与えられていないことが問題です。問題の原因は紛争です。産業が破壊され、経済が停滞しているため、十分な雇用を生み出せず、失業率が高まっています。

パレスチナのガザで活動する若手女性起業家とジェンダーやビジネスについて語らう

次の表はパレスチナ自治政府からのデータで、パレスチナの人の15歳以上全年代平均の教育水準です。ここには出てきませんが、世代が若くなるほど、教育水準は上がっています。

女性の3%が文盲となっていますが、44歳未満に限れば、ガザ及びヨルダン川西岸も1%未満となっています。

パレスチナ自治政府の青少年調査(2022)によると、ヨルダン川西岸及びガザのパレスチナ人の65.3%が30歳未満、43.7%が18歳未満ですが、スマートフォン利用率はヨルダン川西岸で97%、ガザで80%です。

「教育レベルが低い」とか、そういう問題は、それほど心配ないと思えます。

(慢性的人手不足の)イスラエルと(雇用が不足している)パレスチナは、経済的には、暴力さえなければWIN-WINの関係をつくることができるのではないかと思います。

中東移民に職を奪われかねないと、次々と排他的な右寄り政権が生まれているヨーロッパ諸国とは、構造的に異なります。

具体的に書きます。

イスラエルの輸出の54%はハイテク製品であり、GDPの18%はIT産業が生み出しています。イスラエルの最先端のIT企業は、世界中から人種を問わず多くの技術者を集めていますが、ガザやヨルダン川西岸の人材にも注目し始めています。例えば、

イスラエル北部に本社を置くIT企業「メラノックス・テクノロジーズ」は20年前に創業。主に半導体やネットワーク関連のソフトウェアの開発・販売を手がけ、今や従業員およそ2500人を抱えるまでに成長しました。

会社が急速に成長するなか、この企業では9年前からパレスチナ人を雇用し始めました。CEOのエヤル・ワルドマンさんは次のように話します。

「イスラエルでもアメリカでも常に有能な人材の取り合いなんです。会社を成長させるために人材を探し続けています。パレスチナ人はやる気もあるし、生産性も高いです。彼らを雇えてうれしいです」

9年前に採用したパレスチナ人のエンジニアは5人。今ではその数は130 人に増え、パレスチナ暫定自治区に、4つのオフィスを構えています。(略)

パレスチナ側にもイスラエルの企業で働く事情があります。パレスチナの失業率は30%。大きな産業はなく、イスラエルの占領政策のもとで経済は振るいません。

そんななか、活路を見いだそうとしていたのがIT分野でした。占領下でも雇用を生み出す可能性があるとして、ほとんどの大学に専門の学部が設置された結果、毎年3000人のIT技術者が卒業するようになり、供給過多になってしまったのです。

結果として、パレスチナにとって壁の向こうにある「中東のシリコンバレー」はこうしたエンジニアたちの雇用の受け皿としてひとつの選択肢となっています。

壁の向こうの“シリコンバレー” ITエンジニアの葛藤と希望

この企業メラノックスは、AI業界の王者エヌビディアに買収されましたが、

半導体メーカーは占領下のヨルダン川西岸とガザ地区で100人以上のパレスチナ人エンジニアを請負業者として雇用する際、彼らが正社員ではないにもかかわらずストックオプションを提供した。

メラノックスによれば、ソフトウェア会社ASAL Technologiesを通じて委託されているパレスチナ人のデザイナーとプログラマーは、エヌビディアによる68億ドルの買収が2019年末に完了した後、これらのオプションを行使できるようになり、合計で350万ドルもの利益を得ることができるようになるという。(略)

「ヨルダン川西岸やガザの従業員にとって3万、4万ドルは大金だ」とウォルドマン氏は付け加え、同地の失業率は約40%で推移していると指摘した。

パレスチナの請負業者はイスラエルのテクノロジー企業の買収で利益を得ようとしている

これは、一例ですが

暴力さえなければ、パレスチナのアラブ人が必要としている産業や雇用について、イスラエルとは(おそらく長期的に)Win-Winの関係なのです。

ハマスがガザ地区を支配し始めてから以降、イスラエルは、テロ防止のために人の往来を制限してきました。しかし、昨年、治安が安定してきたことを背景に、ガザの労働者に対して、イスラエル国内での労働許可を拡大しました。イスラエルの政権が右寄りだろうがなかろうが、経済は政権維持の最優先事項です。イスラエル側の事情で、労働力が必要だったのです。

前の図は2022年までしかありませんが、2023年にはさらに拡大しています。今年10.7の前の時点で、労働許可は1.85万人ですが、全就労者数が28.8万人(2022)のガザにとって、大きなインパクトです。

人口が1000万人程度の小国イスラエルにとって、政権が右であろうが左であろうが、自由主義経済こそが国益です。経済的に、パレスチナと、WIN-WINを目指すことに大きなメリットがあります。というか、目指さざるを得ません。

ここが、パレスチナとの違いです。

それぞれのリーダーが良い悪いではなく、組織原理の話です。

少しずつ、融和ムードが広がり始めていました。

しかし、10.7のテロで、彼らはガザに送還されてしまいました。

イスラエル経済を必要とするパレスチナ

1993年の世界銀行の報告(つまり、オスロ合意前でヨルダン川西岸やガザが完全にイスラエルの占領下にあった頃)によれば、占領地の3分の1の労働力が(毎日の通勤ペースで)イスラエル国内で働いていたということです。

完全占領下の1970年から1991年の間に、平均寿命は56歳から66歳に伸び1,000人当たりの乳児死亡率は95人から42人に減少し、電気のある世帯は30%から85%に、安全な水がある世帯は15%から90%に、冷蔵庫のある世帯は11%から85%に、洗濯機を所有する世帯は1980年の 23%から1991年の61%に増加していたとのことです。

しかし、オスロ合意後のテロ多発などにより、イスラエルとヨルダン川西岸及びガザとの間に壁が建設されるなどして、イスラエル経済から切り離されていくことで、パレスチナ住民の生活水準の順調な向上は、相当のブレーキがかかったことになります。


2013年の世界銀行の報告によると、1994年にGDPの19%を占めていた製造業の比率は、2011年には11%まで低下し、代わって(国際支援を主要財源とする)公共部門の比率が増え続けています。

また、(完全にイスラエルの占領下にあった)オスロ合意当時に、10%未満だった失業率は、2000年には28%となり、それ以降も高止まり続けています。しかも、雇用者の4分の1が政府部門です。

仮定の話として、パレスチナ問題が政治的に完全解決し、イスラエルがヨルダン川西岸から完全撤退し、全く介入しなくなり、イスラエル経済から完全に切り離されたとしましょう。

死海周辺はカリや臭素など天然資源の宝庫であり、聖書の舞台であるため観光資源も豊富です。現在は、紛争のため開発が不十分なので、期待できます。しかし、それらの開発まで含めても、生み出される労働需要が、イスラエル経済からの切り離しや国際支援の減少分を補えるでしょうか?

そもそも、そういった資源から生み出される利益を、(独立した)パレスチナ政府が、パレスチナの人々に還元するでしょうか?


もう少し、ヨルダン川西岸及びガザのパレスチナ従業員に対する、イスラエル企業とパレスチナ企業の比較を紹介します。

パレスチナ自治政府の統計(2022)によると、パレスチナ人従業員が、イスラエル企業(イスラエル国内での雇用含む)から受け取った日給は276.4シェケル、パレスチナ政府の公共部門での日給は118.4シェケル、パレスチナ人雇用主から受け取った日給は98.4シェケルでした。

さらにガザに限ると、パレスチナ人従業員が、イスラエル企業(イスラエル国内での雇用含む)から受け取った日給は286.1シェケル、パレスチナ政府の公共部門での日給は94.7シェケル、パレスチナ人雇用主から受け取った日給は39.6シェケルでした。

自営業者で比較すると、ガザ地区の自営業者の月収は1,553シェケル(20日勤務と仮定して割り戻すと77.6シェケル)です。一方、ヨルダン川西岸5,327シェケル(20日勤務と仮定して割り戻すと266.3シェケル)です。

よく、ヨルダン川西岸では、イスラエルは横暴に振舞っていると報道されています(そうなんでしょう)。一方、ハマスが支配するガザからはイスラエルは完全撤退(10.7以前)しています。しかし、ガザのほうが失業率も民間給与も自営業収入も、随分と低いのです。この差の原因は、どうみても、イスラエル経済へのアクセスの有無でしょう。

パレスチナ人はいくつかの理由から、パレスチナ人よりもイスラエル人のために働くことを好みます。まず給料が2倍以上になりますが、それだけではありません。イスラエル人のために働くパレスチナ人は、健康手当、病気休暇、休暇、その他の労働者の権利を含むイスラエル人労働者と同じ法律によって保護されていますが、これらの保護はパレスチナ人の雇用主によって認められていません。イスラエル人による待遇が改善された結果、パレスチナ人はパレスチナ人の雇用主ではなくイスラエル人のもとで働くことを選択します。(略)

レストランでウェイターとして働くフアド・カハウィッシュさんは、「私は1日10時間働いて、月給は1,900シェケル以下ですが、年次休暇や旅費などの追加の権利はありません。」と述べています。彼は、「イスラエル人のために同じ仕事をしている私の同僚は、同じ時間数で月に4,000シェケルを受け取っている」と明らかにしました。

パレスチナ人はイスラエルの雇用主のもとで働くことを好む – 国連のブラックリストによって最も傷つくのは彼らかもしれない

この背景には、パレスチナ自治政府がパレスチナ人雇用主の側に立ち、労働法の整備を先延ばしにしていることがあります。イスラエルとパレスチナの対立ばかり焦点が当たりますが、パレスチナ人内部にある不公平、不平等、不条理は、それ以上に大きいのではないでしょうか。

この背景について、日本の外務省の解説を引用します。少し情報は古いけど、認識のベースとしてはこれでいいと思います。

 西岸・ガザのパレスチナ人は、イスラエルの占領下にあるため、イスエルとの関係を密にすることを強制された。その結果、パレスチナ人たちは、占領者としてのイスラエルのみならず、イスラエルの社会に対する見聞を広めた。イスラエルは、占領者であるが、中東では唯一の欧米レベルに近い民主主義国家である。その結果、パレスチナ人たちは、アラブ世界では、実際に機能する民主主義にもっとも日常的に接した人々である。(略)

一方、アラブ諸国にいたPLOは、伝統的なアラブ社会の意識を持っており、両者の間では、文化、社会的な摩擦も発生している。皮肉なことに、パレスチナ警察について、地場のパレスチナ人たちの間では、イスラエル軍より怖いとの印象も生まれている。

 社会的問題としては、今後貧富の差がより明確になる可能性がある。パレスチナ社会は、伝統的アラブ社会であり、貧富の差は激しい。しかし、イスラエル占領下にある状態では、あからさまな貧富の差は顕著化しなかった。しかし、暫定自治が開始されより普通の生活状態が始まり、パレスチナに対する投資が推奨される中で、これまで内在化されてきた貧富の差が日常的な風景として顕著化しつつある。(略)

 西岸とガザのパレスチナ人たちは、暫定自治開始後、「和平の経済的恩恵」を受るどころか、逆に経済的状況は悪化した。これは、イスラエルが爆弾テロのため、暫定自治開始後、パレスチナ人の出稼ぎ労働者を極端に規制、西岸・ガザを封鎖した結果である。イスラエル国内でハマスなどによる爆弾テロが発生した結果、労働党政権(当時)は、従来の政策を劇的に変更、パレスチナ人労働者の代りに外国人労働者を戦略的に導入した。その結果、10万人以上いた合法、非合法のパレスチナ人労働者数は、数万人に激減した。 パレスチナ経済は、イスラエルから商品を輸入し、出稼ぎ労働者が稼いだ賃金で支払う構造が基本である。この基本的構造が崩壊したのは、皮肉にも暫定自治開始以降だった。(略)

中東和平交渉が進展しない時でも、パレスチナへの資金の流入は確実に増加している。西岸やガザを訪問すれば、社会的インフラ、住宅、車などに投資された資金は、視覚的に容易に確認できる。外国からの援助、在外からの投資は増加したとしても、産業基盤強化になっているかは疑問である。(略)

西岸とガザが、食糧を自給できる可能性はない。従って、パレスチナは、輸出あるいは観光産業で外貨を獲得し、食糧を輸入する以外に経済的に自立することは不可能である。

第2章 パレスチナの政治・経済・社会動向」日本外務省

既得利権経済のパレスチナ

ハマスとファハタ

パレスチナ自治政府(ファハタ)の、あまりもの腐敗ぶりに怒ったパレスチナの人々が、クリーンなイメージに期待して支持を集めたのがハマスです。しかし、ハマスも似たようなものでした。それは当然で、彼らは西洋の価値観に合わせようなどとは考えていません。貧富の格差がアラブの秩序です。ハマス幹部の個人資産は、上位三人だけでも一兆円以上と報道されています。日本には生活保護を受給させてピンハネするという「貧困ビジネス」がありますが、それが「国際支援」に代わるだけで、ファハタやハマスのビジネスも似ています。

生活保護が貧しくなければ受給できないように、国際援助も、同情されるような状況でなければゲットできません。ですから、いつまでも「こんなに可哀想だ」とPRし続ける必要があります。

ガザの平和活動家ラミ・アマン氏は、ガザ住民の現状を、次のように説明しています。

「ガザでは、逮捕や迫害によって何らかの形でハマスの手による被害を受けていない家族は一つもありません。人々は機会がなく、出口もないことにうんざりしています。まともな生計を立てる唯一の方法はハマスに所属することだ。政府の仕事に応募したい場合は、モスクからの手紙が必要です」と彼は説明した。

「その間、ハマスの指導者たちは素敵な別荘に住み、高価な車を運転し、高級レストランで食事をしている。そしてもちろん、最高指導者たちはガザにはまったく住んでいません。」

ガザの街頭ではハマスに対する抗議活動が再燃しているが、このまま続くのだろうか?

パレスチナ自治政府(ファハタ、ハマス)は、ガザでもヨルダン川西岸でも、デモを力で鎮圧しており、不満を逸らすために外敵を必要としています。ファハタやハマスは、イスラエルと和平が成立してしまっては困るのです。

そして、既得権益を持つものは、産業の自立を好みません。

「カタールがガザに現金援助を提供し、イスラエルの攻撃後に道路や住宅を再建し、病院まで建設したのをいつも目にします。しかし、彼らが工場を開設するところは決して見たことがありません」とエジプトに亡命中のガザ平和活動家ラミ・アマンは語った。「まるで彼らはガザ経済の発展を望まないかのようであり、私たちを彼らの援助に依存させ続けたいかのようです。

ガザの街頭ではハマスに対する抗議活動が再燃しているが、このまま続くのだろうか?

日本などに比べると極端だなと思いますが、本質は同じです。国際支援にしても、国内補助金にしても、「誰かから奪うことで自分が豊かになる」ゼロサム経済は腐敗するものなのです。「誰かを豊かにすることで自分も豊かになる」Win-Winの自由主義経済へ、経済の仕組みが変わらないと解決しません。

それがパレスチナ問題の本質であり、そのほかのことは枝葉に過ぎないと思います。

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)

UNHCR(国連難民高等弁務官事務所/パレスチナ以外の難民問題を取り扱う)とUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)では、難民の定義が異なります。UNHCRの定める「難民の定義」に従うと、パレスチナ難民の99%は難民でありません。パレスチナ難民は、約560万人から、1〜2万人に激減します。パレスチナを支える難民ビジネスも根拠がなくなります。パレスチナ難民が「難民」の肩書を持ち続けるために、UNRWAは存在しています。

UNRWAは利権の巣窟であることも指摘されていますが、UNRWAの職員の多くがパレスチナ人であり、パレスチナ問題が解決すれば、彼らは失職します。彼らにとって、UNRWAを維持するために、パレスチナ問題は解決されてはならないのです。

2018年、スイスのイグナツィオ・カシス外務大臣(当時)は、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)について、このように述べています。

UNRWAを支援することで、私たちは紛争を存続させています。本当は誰もが紛争を終わらせたいと思っているのだから、それは倒錯した論理だ。

ヨルダン訪問後のカシス連邦議員「国連援助機関も問題の一部だ」

パレスチナ以外の難民は、UNHCRが取り扱っているのだから、UNRWAは解体し、UNHCRに一本化すべきです。

コメントをどうぞ!